自己資金の乏しい小企業が本格的に成長していくためには、設備投資や仕入れ費用を外部からの資金調達で賄わなければなりません。資金調達の手段は銀行からの「借入」と投資家からの「増資」に大別されますが、両者では審査される基準が全く異なります。

(1)借入れの審査基準

借入では、倒産せず、返済を着実に行うことができるかが評価されます。そのため、過去の業績や取引先の信用、堅実な経営状況、今後の資金繰りの見込みなど、お金を貸しても返済を滞ることのない会社だと納得してもらえるだけの根拠だと信用してもらうことが必要になります。またその信用が得られるまでは、経営者個人の資産を担保として差し出すことで、信用を補完するしかありません。よく「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を差し出す」と言いますが、わずかな金利で収益を得る銀行にとって、1社倒産して資金が回収できないと、十数社分の利益が飛んでしまうため、貸先の選定は吟味せざるを得ないのです。

(2)増資の審査基準

一方、増資では、高い成長ストーリーが求められるため、自社がいかに将来性がある企業であるかを、数字を元に説明しなければなりません。また、実際に事業計画どおりに事業を運営していく能力を持っており、また他社と比較して十分な競争力があるかについても、様々な分析を加えて説得しなければなりません。

投資家は「融資」ではなくあくまで「投資」するわけですから、もともと資金を回収するつもりはありません。そのため返済可能性を審査することはありません。特に創業まもない企業に対して投資をする投資家は、投資先の何割かは倒産もしくは、事業が成長しないことを見込んでいるものです。その分、成功した企業から投資額の何倍、何十倍ものキャピタルゲインを得ることで利益を得ようとします。従って、投資の審査の際には、その企業が、将来、いまの何十倍もの利益を生み出す可能性のある企業かどうかを見分けようとするのです。

ただし、キャピタルゲインを見込まない出資もあります。事業提携を目的とした投資です。ITベンチャーに対してシステム開発会社が出資をしたり、飲食店のチェーンを目指すベンチャーに食品メーカーや飲料メーカーが出資したりする例です。いずれもベンチャー企業の事業拡大によって、出資元企業の本業の収益が拡大する可能性があります。このような場合、事業提携を条件として出資をするため、事業運営上、制約が生じる場合もあります。