プッシュ戦略とは、メーカーが自らの力で顧客に対して、強力に「売り込む」戦略、対してプル戦略とは顧客の需要を喚起して、顧客自らに購買意欲を高めてもらう戦略。マーケティングの4Pのうち、「流通経路」(Place)、「販売促進」(Promotion)の2つをどのように機能させるかを決定する際の重要な判断材料となります。

プッシュ戦略ではメーカーは「流通経路」(Place)」である卸売業者や小売業者に働きかけて自社商品を積極的に売り込んでもらうように仕向けます。たとえば家電量販店では自社の社員を店員として派遣したり、販売リベートを提供したりといった、より直接的な「販売促進」(Promotion)を行います。また通販番組などで、直接に顧客に働きかけることもプッシュ戦略にあたります。まだ認知度が低い商品や特徴を詳しく説明する商品などの販売方法に適しています。

プル戦略では商品を売り込むのではなく、消費者に買いたいと思わせるためのしかけ作りを重視します。テレビCM、DM、雑誌広告、タウン誌広告などで自社商品の認知度を上げ、商品のブランド力を高めていきます。その結果として消費者自身に「この商品を買いたい」と思わせることがプル戦略の目的です。既に商品の認知度が進んでおり、改めて商品の詳細説明をする必要がないケースなどがプル戦略に適しています。

留意すべきはプッシュ戦略とプル戦略はトレードオフの関係ではなく、双方を補完的に組み合わせることで威力を発揮するという点です。

たとえば自動車メーカーは新車を発売する際には多くの場合テレビCMを行います。これはプル戦略です。同時に系列の販売店では店員による車の特徴の詳細説明や試乗などを通じて、直接的に購買を促します。これはプッシュ戦略です。

このように営業戦略を考える際にはプッシュ戦略とプル戦略を組み合わせた最適解を検討することが大切です。