社員に権限委譲を行うことにより、社員がその権限を有効に活用して、自律的に最高のパフォーマンスをあげさせること。たんに権限を委譲するだけではなく、それにより個人の力を最大限発揮できるように導くことがエンパワーメントの本当の目的です。適切なエンパワーメントにより人材育成のスピードアップ、組織の活性化、業務効率の向上などが実現します。

エンパワーメントを推進していく上での主なポイントは以下の通りとなります。

(1)権限委譲範囲の明確化

権限委譲を効果的に進めていくためには「どこまで委譲するのか」という範囲を明確にすることが大切です。たとえば営業職の場合、これまでは上司の逐一の指示のもとに動いていた若手営業マンに対して、「初訪から受注までの営業ステップを自ら設計させ、それに沿って自立的に活動させる権限を与える」などが考えられます。

(2)権限委譲範囲の適正化

一方、前述の例で言えば、「受注金額の決定権を与える」などは、若手営業マンには荷が重すぎて、逆に自律的な行動をためらうことにもなりかねません。権限委譲の範囲その社員の能力や経験を考慮した範囲で行うべきです。

(3)放任しない

権限委譲をしたからといって、上司は放任してよいわけではありません。むしろ任せたからこそ「報連相」を徹底させ、部下の自律的な動きを支援する必要があります。部下自身が問題点を発見したり、不足する能力を開発したりする環境を整えることが大切です。これを怠ると会社にとっての大きな損失と部下の挫折によるモチベーション低下を招く恐れがあります。

(4)失敗を許せる雰囲気を作る

権限委譲された部下はこれまでよりもハイレベルな仕事をする訳ですから、失敗はつきものです。部下の失敗が委譲された権限を逸脱したことによる場合は、厳しい指導が必要ですが、委譲内の業務での失敗は、次につながる糧として、許容しかつ努力を評価してあげるだけの自由な雰囲気作りが必要です。